健康ひろば
偶然の産物!「舌に電気ショック」で耳鳴り軽減

もともと、「脳深部刺激療法」という、脳へ電気的な刺激を送り聴力を回復させる実験をしていたミネソタ大学の教授が、ちょっとしたミスをしたおかげで、なんとも大発見をしてしまったという。
ミスをしたのが、リム准教授なのだが、リム氏は実験の際に、電気を流すポイントをすこしばかりずらしてしまった。それに気づかず、装置は作動してしまったとのこと。
きっと慌てふためいたことだったろうと察するが、尚更おどろいたことが、患者の叫び声だ。きっと歓喜ともいうべき声やトーンだったと思うのだが、「長年来の耳鳴りが止んだ!」というものだったらしい。耳鳴りというのは、多くの場合がその原因がわからず、患者は不快感が募っていく。ひどい時には日常生活にも支障をきたすというから、その辛さは大変なものだろう。
基本、聴力を回復させるべく行われていた実験の副産物で、こんな実験結果が得られるとは、きっとリム準教授も驚いたことだろう。それよりもやはり、患者さんが一番驚いたのだろうな、やっぱり。
ただこのリム准教授、やはり科学者なのである。すぐさま、この偶然を必然的なものにしようと調査を始める。「身体のどの部位に電気ショックを与えたら耳鳴りが消えるのか」というものだ。
それから、多くの調査実験を重ね、ついに「舌」が最適な「耳鳴り軽減スポット」だと分かる。
それから、この「舌への電気ショック」を耳鳴りで悩む被験者326人に12週間にわたり試したところ、なんと8割以上の被験者から、耳鳴りが軽減、改善されたという、嬉しい声が聞こえてきたという。被験者には、ポイント制で、どれだけ耳鳴りが軽減されたかを回答してもらった結果、いつもの耳鳴りより平均14ポイントも軽減されていたという。
そして、さらに12ヶ月後の追跡調査の結果では、耳鳴りが軽減されたままと回答した人がやはり80%以上だっというのだ。
実はこの「電気ショック耳鳴り軽減実験」は、2018年に実施されているのだが、電気ショックポイントが違っていた。この時、電気ショックを受けたのは首と頬。軽減されたとする度合いも平均7ポイントと今回の約半分である。やはり舌が最適の「神ポイント」だったのである。
今回の実験では、対照群がなかったということを指摘しつつも、有望な実験結果であると、その他の学者たちもコメントしている。
耳鳴りでお困りの方は、舌への電気ショックを試されてはどうだろうか?
この、なんだか拷問にもにた治療法は、新な耳鳴り軽減への救世主となり得るのかもしれない。
《参考》
Bimodal neuromodulation combining sound and tongue stimulation reduces tinnitus symptoms in a large randomized clinical study | Science Translational Medicine
URL:https://stm.sciencemag.org/content/12/564/eabb2830