健康ひろば
「新型コロナウイルスに感染すると健康な人でも糖尿病を発症する可能性がある」と研究者が指摘

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は発症した人が必ずしも重症化するわけではありません。
自然に回復する方もいますが、高齢者や慢性疾患を抱える人が特に重症化しやすいことが分かっています。
血糖値を抑制するインスリンが十分に働かず、高血糖状態が引き起こされてしまう糖尿病がありますが、COVID-19により重症化する要因の一つとして見られています。
新たに各国の学者たちが「新型コロナウイルスによって健康な人が糖尿病になってしまう可能性がある」と指摘しています。
「糖尿病がCOVID-19の重症化リスクを高める一方で、血糖値をコントロールする能力が低下し、インスリン投与が必要となる可能性」があり、
また、「健康な人でも糖尿病になってしまう可能性がある。」と報告されています。
ヨーロッパやアメリカ、オセアニア、アジア、アフリカの研究者らは、2020年6月12日にNew England Journal of Medicineで発表した声明で、「COVID-19と糖尿病の間には双方向的な関連があります」と指摘。糖尿病がCOVID-19の重症化リスクを高める一方で、COVID-19の患者が血糖値をコントロールする能力を失い、インスリンの投与が必要となる可能性があるとのこと。
糖尿病には主に2つの病態が存在します。
1型糖尿病は、何らかの影響で自身の免疫細胞がすい臓のβ細胞を破壊してしまい、β細胞がインスリンを分泌できずに血糖値が上昇してしまうという自己免疫疾患が原因の病気です。
1型糖尿病は、主に自己免疫機能により起こります。
自分自身を攻撃してしまうのです。つまり、自分の体内のリンパ球が自分自身のインスリンを製造する器官(膵臓にあるβ細胞)を破壊してしまう事でインスリンが分泌できずに血糖値が上昇してしまいます。
2型糖尿病は体質(遺伝)や食生活(高カロリー、高脂肪)、生活習慣(運動不足)などが原因と考えられています。
こおために、インスリン分泌やインスリンの効き具合が低下し、インスリン不足が起こり、高血糖状態となります。
このうち、1型糖尿病はウイルスの感染によって引き起こされる可能性があることが長年にわたって知られています。
ウイルスの感染によって慢性的な「免疫反応」が引き起こされ体内のインスリンを製造する器官(β細胞)を破壊しインスリン分泌がされなくなります。また、1型糖尿病はいくつかのウイルス感染症と同様に、発症が季節性であることも指摘されています。
重症急性呼吸器症候群(SARS)(2003年)時も感染患者が急性の糖尿病を発症する事例が報告されていました。
2009年の研究では、SARSコロナウイルスの感染によって糖尿病を発症した人の多くは3年以内に糖尿病の症状が治まったものの、10%はその後も糖尿病を患い続けたとのこと。
新たに流行している新型コロナウイルスは、SARSコロナウイルスと同様の方法で細胞に侵入しています。いずれのウイルスも、表面にあるスパイクタンパク質と呼ばれる突起が、人間の肺や腎臓、すい臓などの細胞に豊富なアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体と結合して感染します。
この際、ウイルスがすい臓に入ると炎症を起こして正常な細胞機能が破壊され、インスリンを分泌して血糖値を調節する能力が失われて糖尿病を発症してしまう可能性があるそうです。
すでに中国では、新型コロナウイルスに感染したことによって急性の糖尿病を発症し、インスリンの欠乏によって引き起こされる糖尿病性ケトアシドーシスになってしまった症例が報告されています。
しかし、現時点では患者事例(データ)が少ないため。新型コロナウイルスが糖尿病を引き起こすか断言できないとのこと。
また、新型コロナウイルスによって引き起こされるかもしれない糖尿病が、1型糖尿病なのか2型糖尿病なのか、それとも新しいタイプの糖尿病かもしれません。
新型コロナウイルスと糖尿病の発症については、今後のデータ収集が必要不可欠とのことです。
《参考》
New-Onset Diabetes in Covid-19 | NEJM
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2018688
Coronavirus could trigger diabetes in previously healthy people
https://theconversation.com/coronavirus-could-trigger-diabetes-in-previously-healthy-people-140886